猫リレー

こんにちは。小原ピアノ教室の小原です。

いきなりですが、

平吉毅州作曲の《踏まれた猫の逆襲》という曲をご存じですか?

ワイルドな題名で、猫はよっぽど痛かったんだろうなと想像してしまいます。

でも、その題名とは裏腹に、逆襲を感じさせるような響きはなく、初めて弾いた時はタイトルと曲が結びつかず戸惑ったのを覚えています。

情景も思い浮かばず、生徒さんにも説明しづらかったので、長い間あまりお勧めできずにいました。

ところが、その答え合わせは突然やってきました。

この曲、あの有名な《猫踏んじゃった》のアンサーソングだったのです。

以前、作曲家の田丸信明先生の講座に参加した時のこと。

田丸先生は講座の中で、ご友人である平吉毅州先生のお話をしてくださいました。

『平吉くんに、今度《踏まれた猫の逆襲》を弾く子がいるよ、と話したらね、

「あぁ、その曲か」と言って、こんな話をしてくれたんだよ。

毎日僕のところに子どもが通ってくるけれど、誰かしら必ず《猫踏んじゃった》を弾くんだよ。ものすごい速さでね。

うちに来る子だけかなと思ったら、ピアノの先生をしている友人のところにも高速で猫を踏む子がいるって言うんだ。

それを聞いていたら、毎日子どもたちに踏まれている猫が不憫に思えてね。』

と、笑いを交えながらお話ししてくださいました。

「弾く」を「踏む」と表現しているところも秀逸なのですが、その話を聞いてから改めて《踏まれた猫の逆襲》を弾いてみると、

リズムが同じ!

何で気付かなかったんだろう!

とか、

猫が軽やかなステップを踏んでいる!

なんて華麗な逆襲!!

とか、

今まで見えなかった景色が見えてきたのです。

逆襲という言葉の意味の広さと深さに感服し、

この題名を付けた平吉先生のユーモアを感じました。

もともとは「ぴあのドリーム」シリーズの使い方を学ぶために参加した講座でしたが、思いがけず素敵なお土産話を聞くことができ、とても印象に残っています。

さて、そんな《猫踏んじゃった》ですが、うちの教室でも例外なく流行します。

夢中で弾いていた子がある日突然弾かなくなると、今度は別の子が弾き始める。

その子が弾かなくなると、また別の子が弾き始める。

まさに《猫踏んじゃった》のリレー現象です。

去年はRちゃんの中で《猫踏んじゃった》ブームが起きていました。

教室に着くやいなや、

「こんにちはー。最初にちょっと弾いて良いですかー?」

と、ウォーミングアップ代わりに弾いていたのです。

演奏の主、Rちゃんの手。↓

Rちゃんは、いつもきちんと断ってから弾き始める礼儀正しい子です。↑

毎週少しずつ上達していく様も興味を引きましたし、段々とその日のコンディションまで感じ取れるようになりました。

今日は疲れているかな。

今日は余裕がありそうだな。

そんな具合です。

そんなRちゃんに、昨年の発表会では《踏まれた猫の逆襲》をお渡ししました。

《猫踏んじゃった》ブームの真っ最中だったこと。

そして、ダンスを習っているRちゃんなら、猫が軽やかにステップを踏むイメージもつかみやすそうだったこと。

いろいろな理由が重なって、「これはRちゃんのための曲では?」と思ったのを覚えています。

作曲家の思いが伝わるエピソードとともに、私の中でも印象深い選曲になりました。

発表会が終わる頃には、Rちゃんの《猫踏んじゃった》ブームはいつの間にか去っていました。

そして今年の発表会では、

「短い曲を何曲か弾くんじゃなくて、長い曲を1曲弾いてみたいです!」

というリクエストをもらいました。

長い曲は、練習時間が増えるし、本番で集中し続ける力も必要です。

その話をすると、

「出来ます!やってみたいんだよねー!」

と力強い返事。

また一段、一緒に階段を上がれるんだなと思うと、今からワクワクしています。

そして先日、今度は小学1年生のCちゃんが、

「これ弾いてるんだけど……」

と言いながら、《猫踏んじゃった》の冒頭をぽつりぽつりと弾き始めました。

……来た!!!

猫リレー!!!

と心の中で驚いていると、

「お友だちにちょっとだけ教えてもらった」

とのこと。

次はCちゃんね。

この途切れることのない不思議なリレー…。

レッスンに関係ない曲は弾かないルールを持つお教室もあると思いますが、私は見守っていきたいです。